第一章 姉妹

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†††  雨と出会いには何か深い関係があるのだろうかと吉備碧は思いつつ、外を眺めていた。縁雫などという言葉があるくらいだし、きっとあるのだろうと思い直し、拝殿前の階段に腰掛ける。  赤い緋袴に橙色の巫女装束、翡翠のような長い美しい髪は背中の位置で束ねられている。その顔は凛とした芯の強さを感じさせる美しさがある一方で、どこか冷たい印象を人に与える。実際には彼女は冷たいどころか、お節介な面が強い。 ――出会い、例えば、はぐれ陰陽師とその式神との出会いとか 「お、おう。また、バンクでありんす。しかも使い回し。しかし、格好いいことに変わりはないので……」  その式神のうちの一人(一匹? 因みに雌)は、なぜかロボット物のアニメが好きというわけわからん趣味を持っていて、この場の雰囲気をいい具合にぶち壊してくれている。  ついでに言えば、拝殿のすぐ傍でワンセグテレビを見るのは遠慮願いたい。似たり寄ったりなロボットが互いに撃ち合って、その中にいるパイロットだか何だかが、意味深な言葉の応酬をし合っているのがこちらにまで聞こえてくる。
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