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「すまなかったな。彼女は動物が好きなのだ」
「黒、よけいな事言わない」
ぺしっとその頭を叩く。黒というのはその蛟の名前であるのだが、別段体が黒いというわけではない。
外で降る雨のように透き通るような銀色だった。見た目はその色さえ気にしなければ、ただの蛇にしか見えない。その後ろから似たようなのが四匹ぞろぞろと出てくる。
「ふむ、まずかったかな?」「別段」「おかしいことは」「言っておらんだろうに」
四つの頭がリレーのように繋げて言った。青、赤、白、黄の四頭だが、いずれも同じ銀色。ぐわっと銀狐の式が頭を上げた。
「うるさいでありんす!」
「チロ、ちょっとは遠慮というもんを覚えろ」
ぺしっとヨウがその頭を叩いて黙らせる。唐突にその横に銀の光が生まれる。それは人の形を作ったかと思うと次の瞬間には、一人の少女がそこにいた。
銀髪のツインテールで、その容姿は碧と比べると幼い。童顔と言っていいだろう。彼女もまた、ヨウの式のうちの一人だ。名前は確かサク。原身は龍であると碧は聞いていた。
彼女は碧と全く同じ巫女装束に身を包んでいたが、別段驚くことでもない。
式神の多くは人化する際、自分のイメージに合わせて服を自在に変える。
「ここに特に用もないのに、雨宿りしにきた挙句、式にテレビ見せるの許してる時点で、遠慮も何もないと思うけどね」
全くもって容赦がない。だが、彼女の遠慮のなさは術者への愛の裏返しとも取れる。この男、彼女らだけでなく他にも式神を何体か連れている。合わせて五体の式神達は、とある妖刀を扱う為に必要なものであるとのことらしいのだが。
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