101人が本棚に入れています
本棚に追加
――慕われているのね
碧は式神の二人、とくにサクの方を見て思う。
「そういえば、妹さん達はどうしてる?」
今まさに考えていた事をヨウに問われて、碧はわずかにたじろいだ。
「彩弓は今、小学校に。舞香は……今日は学園は休みだといのに、どこにいるのやら」
「なんだ? 家出でもしたのか?」
碧は話すべきかどうかと、逡巡する。そんな彼女にヨウはカラカラと笑った。
「何、うちの妹が心配してたからさ、気になって聞いてみただけだ」
「妹さん」
秋月神社――栃煌神社の春日家とは対となる――の水無瀬神楽は、ヨウの妹で碧や舞香と同じく物の怪の討伐を生業とし、陰と陽の界の秩序を保つ役目を負った若き巫陰陽師だった。
「お気遣いは感謝します。ですが……、これは私達姉妹の問題」
「妹から聞いた話だと、大変な事になっているそうじゃないか?」
碧は言葉に詰まり、それから神楽の迂闊さを呪った。部外者には決して話すなと伝えておいたというのに。ヨウはその話しぶりからすると、すべてを知っているらしい。
「ま、俺に話してもらっても、気休め程度の言葉しか掛けられそうにないけどなぁ。何しろ、物理的に手出しが不可能なところだし」
私立岡見学園、それが吉備姉妹そして神楽の通う「花の園」だった。女子校であり、男子禁制。ヨウみたいな恰好の男が入り込んだら、きゃー変態と罵られて袋叩きにされた挙句、警察署に直行だろう。冗談抜きにそういうことをしかねない学園であった。ヨウはその事を言っているのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!