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だから、嫌なんだ。私なんて。消えて無くなってしまえば良い。
私の想いは、いつも周りを不快にさせる。
「ごめんなさい。……宵風、ごめんなさいっ」
好きになって、ごめんなさい。
「宵風……」
謝るから、そんな顔しないで。貴方を、悲しませたくないのに……。
貴方を想うと、いつも喪失感に囚われる。
私は、出会った瞬間に、別れを思ってしまうから。貴方みたいに別れがはっきりしていると、辛いんだ。……怖いんだ。
「泣かないで……」
宵風の優しい声。
すり寄ってきて、私の背に回される、貴方の腕。
もう感覚なんてほとんど無いんでしょう?
やめてよ。こんな時まで、私を気遣わないでよ。
「……よいっ、て……」
呼ぼうとした名前は、嗚咽に呑まれて酷く聞き取りにくい。
……苦しいよ。宵風。こんなにも近くにいるのに、貴方はもう、半分、私の手の届かない所に居る。
どうして。
物理的な距離はゼロなのに。どうして、……こんなにも、遠い。
……行かないでよ、宵風。──もう、独りは、いや。
「……宵風……」
宵風の顔が、ゆっくりと上がってくる。
冷たい鼻が首筋を這い上がり、頬と頬が触れる。
「泣かないで……」
溜め息の様なこの台詞を、一体何度囁かれただろう。
また耳元で感じ、悲しみは深まるばかりだ。
笑って送ろうって決めていたのに。ダメだ。涙の止め方が分からない。分からないんだ。
宵風への想いが募れば募るほど、胸を襲う痛みは、鋭く、深くなっていく。
嗚呼。
「宵風……」
愛してるんだ。
もう、止められない。
貴方に出逢わなければ、私は孤独を知らずに済んだのに。
これから先、貴方の居ない世界で、死ぬまで孤独に生きろと言うの……?
そんなの……、無理だ……。
「……死にたくない」
「──っ!?」
言った。
宵風が、言った。私の耳元で。
その切ない声に、胸が張り裂ける想いがした。
「死にたくは、無いんだ……」
「──っよいて……っ」
“死にたい”のではなく、“消えたい”と言った貴方。
似ているけれど、全く違う貴方。
だからこそ惹かれた。
優しくて。優しすぎて、だから、消えようとしている貴方。
消えることが、貴方の望み。
ねぇ、じゃあ、消えてほしくないって思ってる私って、酷いやつかな?
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