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R32より軽量なNSXの方が長期戦でタイヤの勝負になれば有利になる。
しかも偶然とは言え、NSXの燃料タンクには半分程度のガソリンしか入っていない。
満タン時に比べれば30キロ程の軽量化も施されているようなものだ。
それでもR32の加速に劣っているので、少しずつ離されて4つの丸いテールランプを睨みながら走ることになったのだ。
五日市ICを通過する頃には2台の速度は250キロに到達していた。
100キロ程度で走行していれば気にもならない路面の凹凸が、この速度域になってくるとハンドルを取られてしまうトラップと化してしまう。
彩音は暴れだしそうなNSXを宥めるようにステアリングを握りR32のスリップに入り追走する。
R32はNSXよりも重量があり安定している分、哲也は彩音より幾分余裕を持って走ることができている。
「軽い車体でこの速度域は怖いだろうな…死にたくなかったらアクセルを抜いてしまいなよ」
哲也はバックミラーに映るNSXの青白いヘッドライトの光を見てつぶやき、さらに高い速度域にR32を走らせる。
車間が開き始めたが、彩音も負けたくない気持ちからNSXを同じ速度域で走らせる。
沼田PA先の右コーナーで少し外にR32が膨らんでゆく。
280キロにも到達しそうな速度のため曲がりが苦しくなってしまう。
哲也は舌打ちをして左足ブレーキを使う。
アクセルを抜いてブースト圧が落ちないようにするためだ。
スキール音が鳴るなか最小限の減速に抑えてR32は加速体制に入る。
一方彩音はNSXの旋回能力の高さが幸を奏して横Gに耐えながらR32よりも速いコーナリングスピードで通過し離れていた車間を取り戻し、テールトゥノーズでコーナーを立ち上がる。
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