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H県の東西に伸びるS自動車道を街頭の光と夜空から月が照らしている暗闇の中で、4つの光が目にも止まらぬ速さで駆け抜けていった。
光の主は2台の車。
今ここで2台の改造車によるバトルが繰り広げられていたのだ。
先を走っているのはマットブラックのNSX、その15m程後ろからぴったりと張り付き獲物を狙うライオンの如くNSXの様子を伺うイエローのランサーエボリューション8。
2台が高坂PAの前を通過した時、ギャラリーから歓声があがる。
「やっぱり漆黒の薔薇乙女は速いよなー」
「でも、あのランエボもまだ離されてないぞ」
「今日のバトルは見る価値があるぜ」
NSXのドライバー『七瀬彩音(ナナセアヤネ)』は夜の高速では『漆黒の薔薇乙女』と呼ばれるS自動車道最速の走り屋である。
「このランエボ意外に粘るわね…でも、この先の長い下りの恐怖に耐えられるのかな?」
そう言って彩音はアクセルを更に踏みつけ、VTECの咆哮を背後のランエボに浴びせて加速する。
「この女…軽さにモノ言わせやがって、エボの加速を舐めんなァ!」
ランエボの男もアクセルをフルスロットルにして猛追する。
2台が長い下りを知らせる警告看板の横を走り抜け、その場には2台の車のエキゾーストノートだけが漂っていた。
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