5人が本棚に入れています
本棚に追加
2台の車速は遂に250キロに達しようとしていたその時、ランエボがNSXに並ぶため隣のレーンに移動する。
そして、これで勝負は決まったと言わんばかりにNSXに視線を送る。
「なっ…」
ランエボのドライバーは言葉を失った。
ランエボの真左に並ぶはずのNSXの姿が見つからないのだから。
スリップストリームを使い横並びにできる自信があったのだが、そのNSXは今までよりも威圧的なサウンドを奏でて軽く30m先にテールの薄暗い光を発してなおも加速していく。
彩音のNSXは排気量を3.5リッターにボアアップしてタービンを組んでいる。
ランエボのドライバーが抜きにかかる時までわざとパワーバンドを外して超高速クルージングをしていた。
そして自分の背後から相手がレーンを移動するタイミングを見計らいフルパワーで加速を始めたのだ。
「あれが漆黒の薔薇乙女か…」
ランエボのドライバーがアクセルを抜き、虚しくウエストゲートの音が周囲に響き渡った。
彩音もランエボがペースを落としたのを確認してアクセルを抜いた。
「もう少し楽しめたらよかったな…」
そんな彩音のつぶやきはV6サウンドにかき消された。
最初のコメントを投稿しよう!