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近藤さん、別れの時が来たようです。
お世話になりました。
出来るなら最後まで近藤さんの役に立ちたかった。
土方さん、近藤さんをお願いします。
私に、秩に、貴男が言ったように、石に噛り付いても生きて下さい。
新選組を、仲間をお願いします。
ゆき、キョウ。
幸せになって下さい。
不甲斐ない父を許して下さい。
もう一度、「おとうはん」と呼ぶ声を聞きたかった。
もう一度、この手で貴方達を抱き締めたかった。
お前達の成長をこの目で見て居たかった・・・
沖田は愛刀を一振りする。
以前の力強さは無くとも、その刃は空を裂き一筋の閃光を放つ。
「駄目ですね。鬼でも死神は斬れないみたいです・・・」
沖田の瞳から涙が流れ落ちた。
秩、私の人生はどうでしたか?
最期まで頑張れたでしょうか?
秩は優しいですから「よお頑張らはった」って言ってくれますよね。
そうだ、そこにすずらんは咲いていますか?
私も最期にすずらんが見たかったですね。
秩、今逝きます・・・
沖田が一際激しく咳き込むと、燃えるような赤い血を吐く。
そのまま身体から力が抜け地面へと崩れ落ちた沖田の横で、愛刀が光を放つ。
霞む目でその煌めきを見詰めていた沖田の耳に、秩のすずらんのかんざしについた小さな鈴の音が聞こえた。
秩、迎えに来てくれたんですね・・・
慶応四年五月三十日、沖田総司は誰に看取られる事も無くその生涯を終えた。
終幕
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