最期の日

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 浜崎邸の座敷で法要に出席した者達が、若すぎる秩の死に居たたまれなさを感じていた。  その中でキョウだけがキミに抱かれ、すやすやと穏やかな寝顔を見せていた。 「あの、すいません。こんな時にあれなんですが・・・」  大阪から駆け付けた酒井意誠が、気まずそうに口を開いた。  酒井は依然、沖田が命を助けた酒井意章の養子である。 「酒井さん、なんでしょう?」  沖田が静かに問うと、恐縮したように答えた。 「失礼とは思いますが、沖田さんは娘さんをどうされるおつもりですか?」  酒井の心配は至極当然の事であった。  沖田は新撰組の組長である。屯所に通いながら子供達を育てるのは到底無茶な話だ。 「酒井はん、そん心配はいりまへん。ゆきとキョウはウチで見ますよって」  新三郎がはっきりと答える。 「そうですか。それなら良いのですが。  実はもし、育てる者が居ないのなら私がと思って居たものですから。  それと図々しいお願いなのですが、もし宜しければゆきちゃんが年頃になりましたら、ウチの新次郎の嫁に頂きたいのですが」  その申し出に、その場に居たもの全員が驚いた。  だが、酒井は父の受けた温情に酷く感謝しているようで、是非とも沖田と縁続きになり、その娘にその恩を返したいと思って居たのだ。 「突然そないな事を言われても・・・」  沖田の変わりに新三郎が口を開いた。しかし暫く黙って思案顔を見せてた沖田が言う。 「酒井さん、その話お受けします。ただ、年頃になったゆきが納得すればの話ですけど、それでも宜しいですか?」  酒井はすぐさま頷いた。  沖田がそう決めれば、新三郎やトクにしても口を挟む余地は無い。  こうしてゆきの嫁ぎ先は秩が亡くなった後に、あっと言う間に決まってしまったのだった。
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