最期の日

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 秩なら、私がゆきの嫁ぎ先を決めてしまった理由が分かりますよね・・・  沖田はゆきが自分の娘になった時から多少の罪悪感を感じていた。  自分は京の街で名高い人斬り沖田である。  その上、新撰組への憎悪は日に日に高まっている。  果たしてそんな娘を嫁に貰う者が居るだろうか?  ゆきは自分が父になった為に、一生嫁がずじまいになるかも知れないと不安を抱えていた。  それにゆきが嫁いだとしても、京に居る限り人斬り沖田の名前は着いて回るだろう。  だが酒井の住む大阪ならば、人に言わなければ沖田の娘と言う事は分からない。  まして酒井は自分に恩義を感じている。ゆきを無下に扱う事は無いだろう。  そう思えば酒井の話はとても良い物に思えたのだった。  それはキョウに対しても言えた。  もしゆきが大阪に嫁ぐ時が来たならば、キョウも一緒に大阪へ行けば良い。  新三郎やトクには悪いと思うが、その内信太の嫁の志乃も浜崎の家に入る事になる。  幾ら可愛がっている孫同然の存在だとしても、何れ負担になる時が来るかもしれない。  娘の居場所を確保する為に、沖田に出来る精一杯の判断だったのだ。  沖田はゆきからの文を優しく撫でる。それは逢う事の叶わぬ娘の頭を撫でているかのようだった。 「団子ですか。ほな、時間の空いた時にでも買ってきましょうね」 「ええ、お願いします」  沖田は老婆にそう言うと微笑みかける。  膳を片付ける為に老婆がそれを持ち上げた時、沖田が話し掛けた。 「そう言えば、土方さんが来たのは何時でしたっけ?」 「四月の五日だったと思いますよ」 「そうでしたっけ? 寝てばかりだと時間の過ぎるのがゆっくり過ぎて、何が何時やら分からなくなります。  すいませんが、手の空いた時に紙と筆をお願い出来ますか?」 「はい、此れを片付けたらお持ちしますよ」  老婆はそう言って出て行った。
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