愛が還る処

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「照れていらっしゃるようですね」 彼の出て行ったドアを見て、クスクス笑う。 「尾沢さん、彼はここで、何をしてるんですか?」 「守谷様はこの数週間、あなたの為に ある事をなさってるんです」 「わたしの為に?」 秀一君がジュエリーショップで、わたしの為に 何をするっていうんだろう。 「お二人が、結婚指輪のご注文をして 下さった翌日、守谷様はわたくしに一つ 頼み事をなさいまして」 「頼み事ですか?」 「ええ、指輪の内側に入れるイニシャルを、 自分で掘れないかと言われました」 「そんな事、素人ができるんですか?」 「そう簡単には…。女性用は小さいですし、 平らじゃないので」 「何でまたそんな事を」 注文した時は特にそんな事、こだわってなかったのに。 「あなたを自分の手で、永遠に縛り付けたい のだそうです」 「彼がそう言ったんですか!?」 「はい。当店はできる限り、お客様のご希望に沿うよう 努めておりますが、そんな要望をなさった方は 初めてで、最初はお断りしました。 一生モノの指輪に、失敗は許されませんから」 「そう、ですよねぇ…」
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