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キシ……。 ゆっくり立ち上がって、何故か忍び足で玄関に向かう。 「……」 ゴク。 唾を飲む音。 もしかして扉一枚隔てた時峰にも聞こえたんじゃなかろうか。 いや、もう諦めて自分の部屋に戻ってるかな。 カチャ……。 ゆっくりドアノブを回し、おそるおそる扉を開ける。 外気がひゅうっと内側へ入り込む。 「……」 暗い玄関に通路を灯す光が差し込む。 視界に汚れ一つないスーツの足と、ダークブラウンの光沢のある靴が映った。 あぁ……。 やば……。 コマ送りみたいに目を上に移す。 いつもの得意そうな顔で、にっと笑う時峰がそこにいた。
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