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早く自分の部屋に入ろう。 なんとなく気まずいし。 ガサゴソとバッグを引っかき回す。 こんな時に限ってバッグの内ポケットから落ちているらしく、鍵が見つからない。 カツ、カツ……。 カツ。 時峰とその女性が真横に来た。 ――あった。 鍵を取り出し顔を上げる。 横で、802号室の鍵を開ける時峰とちらりと目が合った。 特に何か言うわけでもなく。 特に表情が変わるわけでもなく。 ガチャン。 まるで本当に無関係のお隣さんみたいに、いやそれ以上にそっけない素振りで時峰は目を逸らし、部屋へ入って行った。 彼女の腰に手を添えて。
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