9-2

12/16
前へ
/38ページ
次へ
玄関に向かう圭太を見て、私もゆっくり立ち上がった。 キシ……。 玄関で靴を履いている圭太を後ろからそっと抱き締める。 「……ごめん」 私の回した手を両手でゆっくり解いて、圭太は振り返る。 「こっちのセリフ。 俺も自分優先で悪かったと思ってる」 圭太は私の大好きだった笑顔でそう言うと、ドアノブを回した。 「それじゃ……」 ガチャ……。 手を上げて外へ一歩踏み出た圭太を、ちゃんと見送ろうと私もサンダルを履く。 何も言えずに、ただ手だけ振った。 私に背を向けて離れていく圭太を見ながら。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3708人が本棚に入れています
本棚に追加