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カツ……。 自分の部屋の前まで来た時峰は、エレベーターの方へ通路を曲がった圭太を再度振り返って確認し、私の顔を上から目を細めながら見下ろした。 「カレシ?」 もう圭太は見えなくなったのに、掠れた薄い声。 一瞬体に電流が走る。 「……うん」 たった今そう呼べない関係になったんだけど。 「お盛んなことで」 時峰はニッと口の端を上げて笑いながらそう言い、 ガチャ バタン と、802号室に消えていった。 「……は」 ハハ、と笑いたかったが声にならなかった。 どちらが? 皮肉に対して、頭の中で悪態をついた。
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