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「あー。
センセの体温、きもちー。
落ち着く」
私は逆に落ち着かない。
密着してくる堅い体と、いつも以上に強い腕の力、押しつけられている胸の厚みをスーツ越しに感じながら、なんだか泣きそうになる。
彼の匂いも、声も、何もかも、今私が求めているものにぴったりはまり過ぎていて、恋人ではないのに、こうしている間は心の底からの充足感が私を満たす。
私の肩に上からうずまった頭に、そっと手で触れてみる。
整髪剤の微かな匂いが鼻を掠め、髪の毛が私の頬にサワサワ当たる。
「ふ。
なんか今日素直だね。
いつもみたいにバタバタしない」
頭を上げた時峰。
私の耳に口をあてながら囁く声にゾクゾクする。
「ご要望なら抵抗するわよ」
この気持ちを悟られないように、いつもどおりの口調を努めた。
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