3323人が本棚に入れています
本棚に追加
今の私の顔は何色だろう。
きっと、血の気というものをすべて奪われた色だ。
ぐらり、と一瞬にして頭が鉛になったような眩暈。
そんな私を前に、彼女は、
「遅いっておっしゃってたので、もう一度来たんですが……」
と、はにかみながら軽くペコリと頭を下げた。
女から見ても、可愛いと思える顔。
「やっぱりまだ帰って来てないみたいです」
そんな顔で、ハハ、と照れたように笑う彼女に対して、私はとてもじゃないけれど笑顔を作ることができなかった。
「あ……」
言葉が出ない。
なんて言っていいのか分からない。
彼女は少し不思議そうな顔をして私を見たが、再度軽く会釈をして、エレベーターの方へ足を進めた。
最初のコメントを投稿しよう!