19

6/6
3349人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
サイテー……。 もう一人の自分が、俺を冷めた目で見ながら呟く。 それを打ち消すように、ユキのことだけで頭を満たすよう努める。 先程言いかけた言葉は何の意味も持たない言葉だったと、自分を騙す。 ユキにも聞こえていない。 俺も気付いていない。 ……そう。 何も。 言いかけてなど、……ない。 ここはイタリアで。 隣に住んでいるのもイタリア人で。 愛しているのはユキで。 日本に取り立てて未練なんか無くて……。 自分に言い聞かせる。 動きをひと際大きくして、ユキも自分も、何も分からない、何も考えられない動物になれるよう導いた。  
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!