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サイテー……。
もう一人の自分が、俺を冷めた目で見ながら呟く。
それを打ち消すように、ユキのことだけで頭を満たすよう努める。
先程言いかけた言葉は何の意味も持たない言葉だったと、自分を騙す。
ユキにも聞こえていない。
俺も気付いていない。
……そう。
何も。
言いかけてなど、……ない。
ここはイタリアで。
隣に住んでいるのもイタリア人で。
愛しているのはユキで。
日本に取り立てて未練なんか無くて……。
自分に言い聞かせる。
動きをひと際大きくして、ユキも自分も、何も分からない、何も考えられない動物になれるよう導いた。
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