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家を出る。 階段を降りて通りへ出た。 全てが芸術作品みたいなこの街並。 ようやく慣れてきた。 行きかう人達はみんなお洒落で洗練されている。 イタリアは、その中でもフィレンツェは、俺にとって憧れの町だった。 建築や美術に興味のある人なら、誰しも一度は行ってみたい町。 ユキは俺以上に、この町を溺愛していた。 ……ユキは仕事をしていない。 こちらに知り合いもいるし、言葉も問題ないし、実力もあるからすぐに仕事には就けるはずのユキ。 けれども、建築関係の仕事をしたとして、万が一父親や婚約者だった男の知り合いがいたら、ということを考慮して、ずっと家にいる。 海外でも名の知られているユキの父親と元婚約者。 自由になったはずが、以前から住みたいと言っていた町に住めているはずが、何故かユキは窮屈さから抜け出せていなかった。 大丈夫だろ、という俺の言葉も聞き入れずに、ずっと家に籠っている。 今まで家に縛られ続けていたユキは、何かしら強迫観念があるのかもしれない。
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