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こちらに引っ越して来てから1ヶ月目は、ひたすらユキを貪った。 タガが外れたように。 離れていた3ヶ月間を埋めるように。 2ヶ月目で、こちらの生活に慣れてき出した。 町を散歩したり、様々な建築物を見に行ったりする余裕も出てきて。 仕事もスムーズにいくようになってきた。 3ヶ月目。 現在。 特に変わりはない。 最愛の人と憧れの町に住み、仕事も滞りなくこなしている。 とても幸せで。 とても順調な。 ――はずだ。 はずなのに。 ……何に不満を持っているのか。 何に不安を感じているのか。 何か、得も知れぬ違和感が、ポツリと心の隅でこちらをうかがっている。 もうすぐ7月。 気候は大体日本と同じフィレンツェ。 じわじわと暑くなる中、心に空いた小さな穴。 そしてそこを抜けていく小さな風。 俺は、未だ、その正体が掴めずにいた。    
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