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今日、時峰が玄関扉をノックすることはない。 そんなことは分かっていた。 分かっていて、待った。 お洒落をして、ケーキを買って、……待った。 川は絶えず流れる。 同じ水には決して戻らない。 消え、生まれ、変化しながら、ひたすら、ただひたすら、流れる。 私だけ1人、ここから動けないでいるのも知らずに。 観覧車の照明が消える。 『全てのものは無常』 なんだかそう言われているような気になった。 私はいつも、自分で言った言葉が、時を経て自分に返ってくる。 ……帰ったら、ワンホール、食べよ。 そして明日、ビタミンB買わなきゃ……。 私はそうぼんやり考えながら、車のエンジンをかけた。       
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