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あ……。
なんで。
……なんで?
白のステーションワゴンに寄りかかるスーツ姿の男。
嫌味なくらいそれが似合っている。
色素の薄い少しだけ固めた髪。
鼻筋の通った端正な顔。
薄く線の入ったダークグレーのスーツにダークブラウンの靴。
お洒落なシャツにネクタイにタイピンに時計に……。
見覚えあり過ぎる……男。
「……っ、あ……」
……時峰。
……時峰、だ。
「綾川先生?
大丈夫ですか?」
水の中にいるみたいだ。
水野さんの声が遥か遠くから歪んで聞こえる。
カツ、カツ……。
動かない私達を見て、時峰が一歩、また一歩と近づいてくる。
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