25

15/27

3265人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「……」 言葉が……、出ない。 あ、はは、と愛想笑いをする水野さん。 「綾川先生、どうし 「ごめん、わざわざ連れて来てもらって悪いんだけど、2人にしてくれるかな?」 1年近くぶりの時峰の声。 少し低めで、少しハスキーで、少し掠れた、切なくさせる声。 一気に全身の細胞が騒ぐ。 記憶を、思い出を掘り起こそうと全身が活動を始める。 「あ、……はい。 わかりました。 それじゃ……」 「ありがとね」 時峰が優しい声をかける。 水野さんはコートを握ったままの私の手を優しくほどき、お先です、と言ってそそくさと車へ走って行った。 水野さんが車のエンジンをかけ、敷地内から出て行くまで、お互い無言で向き合ったまま。    
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3265人が本棚に入れています
本棚に追加