3281人が本棚に入れています
本棚に追加少しの沈黙。
冬の冷たい風が吹きつける。
ジャリ……、と地面の小さな石ころが時峰の靴の下で音を立てた。
パタパタと背広が何度もひるがえる。
「髪、伸びたね」
顔を斜めにして、微笑みながら手を伸ばす時峰。
パッとその手をかわす。
触らないで。
「うん。
結構ね」
今日たまたま下ろしたままだった髪。
風に舞い踊り、作り笑顔の私の顔を隠す。
「……」
「……」
やだ。
ジワジワと惨めな気持ちが忍び寄る。
思い出の数々が、もう眼前に溢れる直前。
早く、早く時峰から離れなきゃ……。

最初のコメントを投稿しよう!