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男がゆっくり口を拭き、私に馬乗りになったまま、ギロリと睨む。
再度、男の手が振り上がる。
私は顔を思いっきり背け、咄嗟に目を瞑った。
瞑った勢いで溜まっていた涙が流れた。
また来る。
殴られるっ!
そう思った時。
ガンッ!
男から、大きな衝撃が伝わった。
「……?」
でも、私は痛くない。
次の瞬間。
フワッ。
押さえられていた重みがふっとなくなった。
「え?」
目をそおっと開ける。
ドサッ!
ズルズズズ……
涙で歪む万華鏡みたいな視界の中に、家の外へ引きずられていく男の腰から下が辛うじて見えた。
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