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マンションに着いた。 私は携帯を手に握りしめながら、用心深くエントランスに入り、エレベーターに乗った。 大丈夫だと自分で言ったくせに、心臓がバクバクする。 8階に着き通路へ壁を曲がる時には、緊張のピークで吐き気を催すほどだった。 「あ……」 ホッとする。 人影は無かった。 いつもの、見覚えある、帰宅時の風景。 私は、いつもはあまり考えずに立てている靴音を極力立てないようにして802号室の前を通った。 ガサガサ。 バッグから急いで鍵を取る。 「あ」 カチャン! 金属がコンクリートに落ちる音が通路に響く。
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