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――私は引っ越しを決意した。
2週間くらいの間に部屋を見つけて、このマンションを出ようと思う。
その旨を、昨日の電話で既に大家さんには伝えてある。
大家さんは、私の引っ越しまでの間、1階のエントランスに夜間警備の人をつけてくれると言ってくれた。
万が一にもあの男が来たら、追い払ってくれるということだった。
その配慮は、正直、ものすごくありがたかった。
こうやってすんなり戻ってこれたのも、その言葉のおかげだ。
「引っ越しかー……」
ズルズルとソファに沈み込む。
住み慣れた部屋。
ようやく、……ようやく出る決心がついた。
お母さんが作ってくれていたカレーを食べた。
テレビをつけ、特に面白くもないドキュメンタリー番組を見ながら食べた。
夕食を済ますとシャワーを浴びた。
いつも通り。
今まで通り。
日常に帰るだけ。
「……」
そう言い聞かせながら、弱い私はシャワーの滴に隠れ、ほんの少しの涙をこぼした。
「あ、ニキビ」
浴室から出て、髪を乾かしながら鏡を見ると頬に小さなニキビが出来ていた。
おでこのが治った途端に、また別の場所……。
ふん、と鼻で息を吐いた。
そうだ。
ニキビじゃなくて吹き出物って言うんだった……、この歳だと……。
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