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時峰は特に表情を変えずにそう言った。
両想いって分かってても、その言葉に、やはり胸は痛んだ。
「正直言って、最初は重ねてた」
「……うん」
私はかさぶたを無理やり剥がすような、チリチリした痛みを胸に感じた。
「でも、いつの間にか、そんなこと全くもって忘れてて」
「へ?」
「何て言うんだろ……。
元?
ベース?
それが先生になってきて。
結構最初のうちから、先生の声はちゃんと先生の声として俺の耳に届いてた」
「何、それ……?
私、心底悲しかったし、悩んだんだけど……」
時峰は描いていた手を止めて、私を真顔で真っ直ぐ見た。
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