ジレンマ

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「お前に嘘は通用しねーな…。 昨日たまたまスーパーで会ってさ、晩酌に誘われて倉田んち行って…キスしたけど撃沈した」 「ブハッハッハ!」 大笑いする智也をジロリと睨む。 そこまで笑うか? 「どーせ隼人の事だから、倉田さんに好きだって言ってねーんだろ?」 「そんなん照れ臭くて言えるかよ」 やれやれと両手を広げてから、智也は呆れた表情で俺に言う。 「それって隼人の悪いクセだぞ。 本当は欲しくてたまらないくせに、欲しくねーとか。 好きでたまらないくせに、好きじゃねーとか…。 澪とだってそれでダメになったんだろ?」 「分かってるよ…」 「素直になれよ。 態度とか行動だけじゃなくて言葉にして伝えろ。 俺みたいにな」 「は?」 その時店のドアが開く音がして、入口に視線を送った智也が微笑む。 「おかえり」 そう言って智也が、見つめた先には… 柏木が照れた顔をして立っていた。
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