583人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃ、岸本さんお疲れ」
そう言って澪に背中を向けようとした時。
「隼人…待って」
俺の腕を掴んで見上げる澪の瞳が、やけに寂しそうに揺れていた。
「…言ったろ…?俺はもう澪とはやり直せねーよ」
「…そんなの分かってるよ…」
「じゃその手離せよ」
「もう隼人とやり直したいなんて思ってないけど…少しだけ胸貸して…」
ポロポロと涙を零し始めた澪が、俺の胸におでこをつけて顔を伏せる。
別にもう澪に未練はないけど…黙って泣いてる彼女を振り払う事なんて俺には出来なかった。
「澪…お前…BLUE STYLEで何かあったのか?」
「…隼人は…何も言わなくてもやっぱり私の事…分かってくれるんだね」
「何があった?」
そう…澪って女は昔からこうだった。
仕事で嫌な事があっても、自分の限界まで俺に頼らない。
だけど、自分の中で限界を感じた時だけ、俺の胸の中で黙って涙を流して…
それでケジメをつけて、またいつもの頑張り屋の澪に戻って行く。
最初のコメントを投稿しよう!