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「澪…?」
小さく震わせて泣いてる澪の肩にそっと手を回して叩いてやる。
「吐けよ。それで楽になるんだろ?」
そう澪に声をかけた時だった。
「…部長…?」
暗闇の中から聞こえた声に目をこらしてその姿を探した。
薄っすらと俺の目に映ったのは、バッグを胸に抱えて立ち尽くす…
───倉田の姿だった。
「倉田…?」
俺の言葉に慌てて顔をあげた澪と、倉田の視線が交わった。
「岸本…さん…?」
何で?とでも言いたそうだった倉田の表情がみるみる歪んで行く。
「あっ…倉田部長…これは…違うのっ」
慌てて澪が俺の胸から離れて手を横に振りながら否定する。
けれど倉田は顔を引きつらせながら、必死に声を絞り出す。
「あ…あの…ご…ごめんね…邪魔…しちゃった…アハハ…」
そう言いながらも歪んで行く倉田の表情。
全てを言い終えたと同時に、背中を向けると逃げるように走って行く。
「倉田!」
思わず叫んだ俺の声にも振り向かず、体を揺らして走って行く倉田の姿に全てを拒絶された気がした。
…あー…終わったわ。
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