ジレンマ

31/39
前へ
/39ページ
次へ
呆然と立ち尽くしていた俺に澪が声を掛ける。 「隼人…追いかけないの…?」 「…追えるワケねーだろ…倉田は俺の女じゃねーし…」 「…そう…」 しばらくの沈黙のあと、俺は澪を見下ろして言った。 「で?何があった? 言って楽になるなら聞いてやってもいいぞ」 「本当にいいの?」 「だから何が?」 「倉田部長、あのままでいいの?」 「見てて分かったろ? 倉田は俺を拒絶したんだよ。 もういいから、行くぞ」 澪の腕を掴んで歩き出す。 そりゃ追いかけたいけどさ。 澪だってひとりで歩かせられねーほど、泣いてんじゃん。 そう思いながら俺は倉田が走って行ったのとは、反対方向へと足を進めた。 俺だって…どーしていいのか分かんねーよ…。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

583人が本棚に入れています
本棚に追加