ジレンマ

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「よろしくお願いします」 社交辞令満載の笑顔を載せた挨拶を返してやったけど。 …なんでよりによって澪が出向して来るんだよ…。 そう思いながら、仕事の内容を説明する倉田の横でじっと澪を睨んでやった。 面談が終わって3人で社長室を出てからエレベーターに乗り込むと同時に、俺は倉田に声を掛ける。 「岸本さんは俺がエントランスまで送るから、倉田は先にデザイン部に戻ってていいぞ」 「えっ…?…はい分かりました…」 不思議そうな顔をして首を傾げる倉田。 けれど俺は正直、余裕のない状況。 デザイン部のフロアで止まったエレベーターから降りた倉田は、キラキラの笑顔で澪に頭を下げた。 「じゃあ岸本さん、お気をつけて」 「ありがとうございます」 にこやかに微笑み合う女たちを横目に見ながら、俺はボタンを押して扉を閉めた。
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