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ある朝、霧が広がる波打ち際に
林檎と手紙が落ちていた。
「すべてを忘れられる実」
月からの贈り物だろうか?
海からの贈り物だろうか?
僕は疑わず彼女に食べさせた。
これで彼女は泣かない、
きっと解放される…
なんとなくそう思えた。
彼女も躊躇なく
林檎を頬張った。
僕に「ありがとう」と
つぶやいた。
僕は願っただけ。
それだけなのに、
彼女は僕にそう言った。
優しく微笑んで
彼女は僕にそう言った。
それから彼女は
呪縛から解放されたかのように
泣かなくなった。
ただ、僕の事も忘れてしまった。
笑う事も言葉も忘れてしまった。
泣く彼女を見るよりかは
それでイイとさえ思えた。
彼女は相変わらず月を見る。
彼女は相変わらず海を見る。
それが何か分からないはずなのに、
あれが何か分からないはずなのに、
彼女は相変わらず月を見る。
彼女は相変わらず海を見る。
海辺にある、
小さな小さな
白い家。
そこに僕と彼女はいる。
それが僕らのお城。
僕と彼女がいれば
それでイイ。
僕と彼女がいれば
そこが僕らのお城。
彼女の長い髪を梳かし
彼女の好きな食べ物を
口へと運ぶ。
彼女の好きな歌を歌い
彼女のお気に入りの本を読んで
ベットへと運ぶ。
彼女は何も答えない。
僕は此処にいるよ?
気づいて、僕を見て、
僕は此処にいるよ?
周りは僕が哀れだと言う。
周りは僕が馬鹿だと笑う。
僕は幸せなんだ。
僕は幸せなんだ。
幸せなんだよ?
だから、君も
幸せだと言ってくれ。。。
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