幻影の華君

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彼女は相変わらず月を見る。 彼女は相変わらず海を見る。 それが何か分からないはずなのに、 あれが何か分からないはずなのに、 彼女は相変わらず月を見る。 彼女は相変わらず海を見る。 月に会いに 海に導かれる彼女の背に 僕は彼女の名を叫んだ。 彼女は背を向け月を見ず、 僕へと振り返り、 微笑んだ。 海を荒々しく掻き乱して、 僕へと振り返り、 微笑んだ。 ありがとう… ゆっくり口が動くと 彼女は優しく泣いて、 彼女は暖かく泣いて、 月へと 海へと 消えた。 僕は幸せなんだ。 僕は幸せなんだ。 幸せなんだよ? 君もそうだったよね? でも、何処か 僕も解放された気分になった。 彼女のいない海を 茫然と眺めた。 月に祈る事はもう何もない。 海に願う事はもう何もない。 もう何もないんだ。 僕は解放された。 彼女がいなくても 此処が僕らのお城。 ずっと、ずっと、 お城だよ。 ありがとう、 ありがとう。 出会ってくれて、 ありがとう。 僕はまた、君を探すよ。 いつの時も僕は 君を探すよ。 みつけてみせるよ。 どんな君も 僕は好きだよ。 月よりも 海よりも 僕は君が 大好きだよ。 お城で、また会おう。 僕はまた、君を探すよ。 ずっと、ずっと、 僕は探し続けるよ。 長い旅路の向こう側に 優しく微笑む君に 僕は会いに行く。 僕は君が 大好きだよ。
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