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私は携帯を強く握りしめた。
アドレスを交換してまだ少ししか
日は経ってなかったから、
メールをすべて読み返すのに
そう時間はかからなかった。
恒の言う、俺らの仲とやらが壊れても
恒のせいだから。
もう、知らないから。
恒がそんな勝手するなら私も勝手にする。
過去は過去だ。悩むな。迷うな。
指をゆっくり動かし始めて
字を一つ、また一つ打ち込んでいく。
カチ、カチカチ。
ボタンを押しながら浮かんだのは
今までの思い出だった。
優しい恒優。
ふざけてばかりの恒優。
おもしろくて楽しい恒優。
告白してくれた恒優。
断っても変わらず接してくれた恒優。
楽器が大好きな恒優。
メガネが年と共に大人になっていく恒優。
彼女ができた恒優。
もしかしたらもう今までみたいな
友達には、戻れないかもしれない。
私は打ちながら、涙が止まらなかった。
踏み出せない。踏み出せない。
怖い、怖いよ。
気持ちを素直に
伝えるだけなのに…
昔から心臓に毛が生えてる侑子ちゃんって
言われてきたのに。
女は度胸と愛嬌だっておじいちゃんも
言ってたのに。
こんな弱虫で、泣き虫じゃないはずなのに。
…あぁ、私
この恋、本気なんだ。
今みたいな仲良しのお友達も
十分幸せだよ。
でも私、なんだかすごく
欲張りになっちゃったみたいで
恒の支えになりたい。
もっと側にいたい。
誰よりも近くにいたい。
恒が安らげる存在になりたい。
特別な存在になりたい。
愛してほしいの。
「私が好きなのは、あなただよ。」
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