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目の前で行われる私の彼氏と私じゃない女のキスシーン。
そりゃあ自分のキスシーンなんて第三者の立場でみれないにきまってる。
全てが止まったと思ったけれど、私の口は自然と彼の名前をよんでいた。
「和馬くん…」
声は小さかったようだけど、私と二人しかいない静かな公園では聞き取るには十分の大きさだった。
彼…和馬くんはバッと彼女から離れ、気まずそうな表情で私をみて、私の名前を呼んだ。
「奈緒。」
私は今どんな表情でいるんだろう。
なにも考えられない。
あれ、今どんな状況だっけ。
ズサッと砂利の音がする。
同時に止まっていた全てが動き出した気がした。
私は彼がいる方向とは別、つまり私が来た方向と逆に踵(きびす)を返した。
私がそうするかを知っていたかのように、いつの間にかそばに来ていた彼に手首を捕まれ動くことができなかった。
いったい何を言われるのだろうか…
「…っ奈緒。」
「…なに?これ放してよ。」
そういって捕まれた手首を見る。
「いや、放せない。放したらどこかいくだろ?それに話はすんでないだろう。」
そうだ、話があったんだっけ。
そんなことを考えていると手首をひかれ彼女の前にまで連れてこられた。
何を話し出すのかと待っていたら私の手首を放し、その手は彼女の手と結ばれた。
私は放された所をぼーっと見ていた。
思っていたよりも強く掴まれたようでアトが残っている。
こんなに力強かったっけ?
我ここにあらずの私に彼は衝撃的な言葉をあびせた。
「ごめん、彼女に子どもができたんだ。だから俺お前と別れて彼女と結婚したいとおもってる。」
リカイデキナイ、
ナニヲ
ナニヲイッテイルノダロウ。
ナンデ
ナンデテヲツナイデイルノダロウカ。
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