第1話

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その日、河原進太は、ほろ酔いで深夜の街を歩いた。 空港警備の仕事を終えてから仲間と居酒屋で飲んだのだ。 いつしか眠り込んで、眼を覚ました時には仲間は居なかった。 いつもなら、そのまま自宅へ戻るのだが、その日は、すぐに帰りたくない理由があった。 カラカランッ 【BAR みちしるべ】のドアを押して入ると、カウンターの左端に中年が二人。右端にポニーテールの女性客が一人で飲んでいた。 進太は、空いている五つの席の真ん中に腰を降ろした。 「いらっしゃい」 マスターが、にこやかな表情で迎えた。 「こんばんは」 進太は煙草を取り出してカウンターに置いた。 「ふんっ! 実力もねえのに偉そうに……金儲けが上手いだけの、あんなあきんどに言われたかねえよ!」 「いや、まあまあ。ヤツにも事情があるんだろうよ」 大声で話す中年組の会話が、いやでも進太の耳に入る。 進太は煙草を1本抜き出して火を点けた。
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