ロンギング

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私はゆっくりと起き上がって当て所なく夜の街を歩き始めた。ネオンの光が滲んで見える。 そっと顔に触ってみるとありえないくらい腫れているのがわかったけど、もともと私の顔なんて椿と違って酷いもんだ。 椿。 私がこの目で見たものの中で最も美しいもの。 それが椿だ。 初等部の転入生として椿があの学校に来て、私の隣の席に座った時から私の人生は椿を中心に巡る運命だった。 猫のような目。透き通るような肌。ほっそりとした首筋。さらさらの絹糸のような髪。 私が憧れてやまない少女。 それが椿だった。
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