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やがて、化学同好会に深入りするうちに、真吾の目指す高校レベル以上の化学実験が非常に危険なものであることに気付き始めた。ある部活日に、真吾は彼の『計画』について語った。それは、時限爆弾製造であった。一樹は爆弾製造には興味があった。しかし、真吾の興味は爆弾製造を超えていた。彼は自分たちが製造する爆弾の威力を知るための実験に興味があったのだ。真吾はそれを『計画』と呼んだ。
最初は小手調べとして近くの林に深い穴を掘ってその中で時限爆弾を爆発させた。小規模だったので、ほとんど実害はなかった。しかし、次の段階の『計画』として、学校裏庭の飼育小屋を爆破することを真吾から聞いた時、一樹は拒否した。
「それが三日前の飼育小屋の爆発だったのね」
晶子の言葉に一樹は目を見張った。
「そうか。僕は登校拒否していたので分からなかったけど、あいつら実行に移したんだな」
「それで、真吾たちの『計画』はそれで終わりなの?」
「いや、彼らの次の標的はテロだ」
「テロ?」
「実際に、どれだけの人間が殺傷されるのか、その威力を実験して試そうというんだ」
「えっ。それって殺人じゃない」
「真吾たちにとっては、自分たちの興味の延長線に過ぎないんだ。だから、その線上に殺戮があっても気に止めない冷酷なやつらなんだ」
そう言って、一樹は憤りと自分の無力さに苛立った。
「私が止めるわ」
「どうやって?」
「それはいま分からない、でも、朋美を助けることが先決だわ」
「恐らく、朋美さんはあいつらの実験小屋に閉じ込められているんだと思う」
「実験小屋?」
「そうだ。晶子さんと僕が一緒に下校した時に歩いたあの河原に、茂みに隠れて分からないけどあいつらの実験小屋があるんだ。そこで爆弾製造工程のうち、学校ではできない危険な作業をやっているんだ」
「わかったわ。一樹さん、そこへわたしを案内して。今すぐに!」
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