第5話 ストーカー

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 一樹は晶子に自転車を取ってくると言ってマンションを出た。母親の和子は一樹と一緒にうちにいる晶子の姿を見て一瞬驚いたが、一樹が出かけるのを観た喜びの方が勝った。マンションの外で晶子は携帯を取り出し南雲にいまの状況を連絡した。南雲は時限爆弾やテロという言葉を聞いて驚いた様子だったが、ただちに現場に急行すると告げて電話を切った。  やがて、一樹の自転車に乗って二人が河原に到着したとき、辺りはすでに真っ暗闇だった。しかし、一樹は以前にも確かに来た事があると見えて、迷わず実験小屋を見つけた。 「あそこが実験小屋だ。薄明かりが見えるからあいつらがいる筈だ」 「これから、どうするの?」 「恐らく、朋美さんが彼らの秘密を探ろうとして、真吾にそれを悟られたんだと思う。だとしたら、テロの前に彼らは次の『計画』として朋美さんをターゲットにするのかもしれない。それを確かめたいんだ。晶子さんはここに隠れていてくれ。僕が彼らと話をつけてくるから」 「わかったわ。でも、一樹さんくれぐれも気をつけてね」  一樹は晶子の言葉に頷いて、実験小屋の方へ歩いて行った。晶子は即座に、透明人間に変身して一樹の後を追った。  実験小屋では、中央の柱に朋美が手足を紐で縛りつけられていた。その傍で、携帯ライトを置いた作業机に向かって真吾と健太、直人が時限爆弾の用意をしていた。 「わたしをどうしようというの?さっきから一言もしゃべらないけど、何か言いなさいよ」  昨夜からここに監禁されて衰弱していたが、朋美は必死にもがきながら声を張り上げた。 「ふん、大きな声を出しても誰も助けには来てくれないさ。お前には俺たちの実験を手伝ってもらう」  信吾が健太と直人に作業の細かい指示を出しながら、朋美に言った。 「あんたたちの実験って、あの飼育小屋の爆発のこと?」 「そうだ。だが、今度は動物ではなく人間だ。お前にターゲットになってもらう。ここに時限爆弾を仕掛けてその威力を試すんだ」 「何を言ってるの。あんたたち気でも狂ったの?」 「お前は俺たちの『計画』を探ろうとして同好会に近づいたんだろ?自業自得だ。それに、残念だけど、俺たちの時限爆弾計画書は学校の化学実験室には置いてないんだ。この実験小屋にすべてが隠してあるのさ」
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