第5話 ストーカー

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「よろしい。次!」 「第二の被害者、小川まどか二十二歳の推定死亡時刻は、四月十一日の午前一時頃ということです。やはり、検死結果では凶器は鋭利な刃物で胸と首筋に二箇所に刺し傷があり、それらが致命傷で即死と断定されました。彼女は郷里が長野で、親元を離れ帝都大学四年生でしたが交友関係は多く捜査中です。今現在では彼女の交友関係に被疑者と思われる者は特定できていません」 「よろしい。次!」 「第三の被害者、佐藤智代二十六歳は、五月十一日の午前零時頃の死亡と推定されました。凶器はこれも同じように鋭利な刃物で胸と首筋に二箇所に刺し傷があり、それらが致命傷で即死と断定されました。彼女は東町北の美容院に勤める美容師でしたが、交友関係については現在捜査中です」 「よろしい。いまの報告で分かるようにこの三つの事件には共通点が多く、同一人物の犯行という見方が濃厚と思われる。しかも、いずれも被害者の左耳を切り取っておそらく『お土産』として持ち去った猟奇的な犯行手口は、殺害方法も極めて手慣れていることと併せて考えると容易ならぬ殺人鬼の仕業と思われる。皆さんには引き続き被害者の交友関係の洗い出しを継続することともに、現場近辺の聞き込みをさらに強化していただきたい。南雲さんから、何かありますか?」 「本庁でも全力を尽くして犯人の割り出しを行っています。ただ、この犯人が連続殺人鬼ということはまず間違いないと思われ、次にまた殺人を犯す可能性があります。この事件では毎月十一日に犯行が行われているので、もし、次があるとするならば、今月十一日を警戒することがまず必要だと思います。したがって、次の犯行を全力で阻止するためにも十一日まで二週間あまりしかなく、徹底した捜査をお願いしたい」  南雲刑事の言葉を受けて署長がコメントをした後、捜査会議は終了し捜査員たちは持ち場に帰って行った。晶子は南雲の車の中で再び愛らしい姿を現した。 「この一連の殺人事件は異常人格のプロによる犯行だ。もし伊藤先生のストーカーがこの事件と関連しているのであれば非常に危険だ、晶子も十分に気をつけて欲しい」 「わかりました。何かあればすぐに連絡します」 「うむ」
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