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それから一週間が経った。晶子が登校すると、話があると言う朋美に屋上へ誘われた。それは直美のストーカー問題の調査報告だった。二人は屋上のデッキの石段に並んで腰を掛けた。
「わたし一週間、伊藤先生が帰りに通る道が見える表通りの喫茶店にいて、写真を撮ったの。それがこの写真よ」
そう言って朋美はポケットから取り出したデジカメを晶子に見せた。デジカメの液晶画面に次々と道行く人々の写真が現れた。
「それで、何を発見したの?朋美」
「まあ、慌てないで。ほらこれは月曜日の写真よ。伊藤先生が写ってるでしょう。そして、その伊藤先生の背後の人たちの写真がこれよ。これを順に毎日撮って、その中に同じ人物がいないか調べたのよ」
「そしたら…?」
「そう、いたのよ。それらしき人物が」
「どれ、どの人なの?」
「ほら、この野球帽を被った男の人よ。一週間に三回、服装は変わっているけど同じ帽子を被った男の人が写っているわ」
「すごいわ、朋美」
「でも、問題はこれからよ」
「うん。そうね」
「今度は一緒にこの喫茶店で張り込みましょうよ。そしてその男の人が現れたらわたしたちで捕まえましょう」
「それは危険だわ。それにその人がストーカーかどうかもまだはっきりしないわけだし」
晶子の言葉を受けて、朋美は少し考えた。
「いいわ。伊藤先生にも相談してみましょう」
「そうね。それが良いわ」
放課後のPC室で、晶子と朋美は直美にデジカメからパソコンに移した写真を見せた。
「伊藤先生、どうですか。この野球帽を被った男の人が怪しいと思うんですが」
朋美がパソコンを操作して男の顔を拡大して見せた。
「あっ。これは…」
「先生、ご存じの方ですか?」
晶子が直美の顔を覗き込むようにして訊いた。
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