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その日帰宅した晶子の携帯に朋美から電話が入った。朋美の声は興奮していた。
「朋美、どうしたの?」
「澤本くんは登校拒否じゃないかとA組の担任が心配してるって、伊藤先生から聞いたの」
「ええっ。いつから?」
「どうもあなたと渋谷でデートして間もなくらしいわ」
「わたしが原因なのかしら?」
「まさかね。それとも、何か思い当たることとかあるの?」
「うーん。わからない。あの日はわたし、映画とか食事とかで楽しかったし…」
「そうよね。わたし、澤本くんの住所を聞いたから明日一緒に訪ねてみよう」
一樹の住まいは普通のマンションの三階だった。朋美が呼び鈴を押すと、母親の和子がインターフォンに出た。朋美が一樹の見舞いに来たと伝えると、和子は朋美と晶子を迎い入れた。一樹の登校拒否は和子にも思い当たる節がないという。ただひたすら、自分の部屋に引きこもって、食事もそこで済ませるという。案内された一樹の部屋の外から晶子が声をかけた。
「一樹さん、わたし、晶子よ。会ってお話をしたいの。ドアを開けてくれない?」
「…」
「一樹さん、返事をして!」
「晶子さん、悪いけど帰って下さい。話すことは何もありませんから」
「何が原因なの。わたしと関係あること?」
「そうじゃない。晶子さんとはまったく関係ないから」
そう言ったきり一樹はもう一言も返事をしなかった。朋美と晶子は仕方なく一樹のマンションを立ち去った。外からマンションを見上げると一樹の部屋だけが暗かった。晶子の心は沈んだ。朋美が「なんとかしなくては」と、晶子に言った。
帰宅した晶子は南雲太郎に一樹について事情を話した。そして、晶子は一樹の秘密を探るために彼のマンションに潜入してみることを南雲に告げた。南雲は異常な連続殺人事件を追っているらしく、晶子の話をうわの空で聞いてただ頷くだけだった。その時、南雲の携帯がなった。そして、「三人目の被害者が出た。本庁に行く」と言ってすぐに出かけた。
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