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翌日の夕刻、晶子は一樹のマンションへ行った。透明人間に変身した晶子が玄関ドアの前でしばらく待っていると、和子が買い物から帰ってきた。晶子にまったく気付いていない和子がカギを開けて玄関に入る時、晶子もすり抜けるようにして一緒に中へ入った。和子が夕食の用意をしている間、晶子はマンションの各部屋を物色した。家族はほかに小さな男の子がいてリビングルームのテレビを観ていた。3LDKの普通のマンションだった。
晶子が一樹の部屋の傍に佇んでいると、和子が食事を乗せたトレイを運んできて一樹に声をかけた。中からは何も返事がなかった。和子はため息をついてトレイをドア横の廊下に置くと台所に戻って行った。やがて、ドアが開いて一樹が出てきた。そしてトレイを持って部屋に入った。その間に、晶子も素早く部屋に入っていた。
一樹の部屋は整然としていたが空気はよどんでいた。机の上にパソコンがあり、画面には書きかけのメールがあった。一樹が低テーブルにトレイを置いて食事を始めた。晶子はそのメールを読んだ。やがて一樹が食事を終わり、ドアを開けてトレイをもとの処へ置いている隙に、晶子はすばやく部屋を出た。そして、そのまま帰宅の途についた。途中、晶子は一樹のメールを思い出していた。
― 僕は君たちの計画に反対だ。僕にまだ強要するのなら、学校にも行かない… ―
そして、そのメールの宛先はsinyanai@yahhoo.co.jpとなっていた。晶子は、sinyanaiが何者かを突き止めたいと思った。
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