第5話 ストーカー

7/26
前へ
/26ページ
次へ
 晶子は真吾を観察することにした。教室での授業態度から最初に分かったのは、彼が成績優秀な生徒だということだった。そして、放課後彼は決まって校舎の地階奥にある『第二化学実験室』に向った。その日は学校の定例部活日であった。透明人間に変身した晶子が真吾の後を追ってその化学実験室に入ると、生徒が二人先に来て待っていた。(ここでも部活があるらしい)、晶子はそう思った。そして、そのリーダーは真吾だということも分かった。 「それでは、化学同好会を始めます」  真吾が教壇に立って宣言した。すると、生徒の一人真島健太が手を挙げて質問した。 「ここ二回ほど澤本一樹が欠席していますが、柳井さんはなにか御存じですか?」 「うん、登校拒否だと聞いている」 「登校拒否ですか」  そう言って健太がニヤリとした。もうひとりの生徒、村上直人からも笑いが漏れた。 「いったいあいつ何をビビってるんだ」  晶子は直人が自分と同じクラスの生徒だと気がついた。 「さあ、僕は昨日もメールを打って部活に出るようにと言ったのだけど、拒否されたよ」  真吾も冷たい眼差しのまま苦笑した。 「それよりも、早く我々の『計画』の第二段階を実行に移しましょう」 「そうだそうだ」  健太の言葉に直人が相槌を打った。  信吾が教壇を降り大きな実験机を取り囲んで、三人は化学実験の準備を始めた。晶子には薬品の調合に夢中になっている彼らが何を企てているのかまったく見当がつかなかった。しかし、一樹が真吾たちの『計画』に参加するのを嫌がって登校拒否していることだけは確信した。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加