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目の前に広がる風景を見たくないと思いながら、ただただ見入っている不思議な感覚……。
「ミル、逃げるぞ! そろそろ打ち止めだ!!」
リュークの怒声で我に返った。
「あ、うん。わかった!!」
乱射をやめて、手榴弾のピンを抜く。
『追ってこないでね』
心の中で、そう叫びながらウィグに向かって投げ込んだ。
ドゥッ
激しい爆音と土煙が、辺りの空間を包み込む。
「来い! ミル」
相手がひるんだ隙をついて、リュークがH・W(ホバー・ウェイ)に乗り込んでいた。
「わ、わかった」
すでに、始動を始めているH・Wにミルが飛び乗る。
乗り込むや否や、二人を乗せたH・Wは一気に加速、この場を後にした。
『一体、いつまでこんなことを続ければ良いのかな……』
めまぐるしく移り変わる景色を眺めながら、ミルの心はそんな不安で満たされていた。
☆☆☆☆☆
「よ~、お二人さん。遅かったのぉ」
アジトの格納庫で、恰幅の良い白髪混じりの男が出迎えてくれた。
「なによ、好きで遅くなったわけじゃないよ。ヴォル」
ミルは、ちょっとふてくされて見せる。
「ハハハ、そうとんがるな。 リューク、ミル良いものが手に入ったんじゃよ」
豪快に笑いながらヴォルは言う。
「良いもの?」
ヴォルのその態度に、不機嫌さを表しながらもついつい興味を刺激されるミル。
「ハハハ、こいつさ」
そう言いながらヴォルは親指で、格納庫の隅を指さした。
ミルもリュークもその先を見る。
「あっ」
「こ、こいつは……」
二人の口から、思わず声が漏れる。
「ね、ね、ね、ヴォル。これって、これって、もしかして……」
感激のあまり、声がうわずっているミル。
言葉にならないミルの気持ちを察して、ヴォルがうなずいてみせる。
「あの、ほら、アレ、アレだってばぁ。ねぇ、ねぇ、リューク」
リュークの腕をつかんで飛び跳ねる様は、見ていても微笑ましい限りである。
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