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軋む木の開き戸をあけ、
「徳ばあちゃーん、こんにちは!」
奥まで聞こえるように大声を出した。
六畳ほどしかなく、ところ狭しとお菓子が並べられている店の一番奥、
何故か1箇所だけ本棚が置かれた後ろから、
白髪の髪を後ろで一つにゆい上げた、
小柄で可愛らしいお婆さんが姿を現した。
「ああ凪ちゃん久しぶりだねぇ。
頼まれてた本、今朝届いたよ」
そう言って徳ばあちゃんが、茶色の紙袋を差し出してきた。
「やった!ありがとう、徳ばあちゃん」
私は財布を取り出すと、
木のカウンターにお金を出した。
「その本、人気があるんだってね。
年寄りには難しくて読めないよ」
そのしんみりとした声に、
「そんなことないよ、徳ばあちゃんも読んでみて。
絶対ファンになるから」
私が力強く言うと、
徳ばあちゃんは嬉しそうに笑った。
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