召喚計画

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「ここは鬼狩(オニガリ)。悪鬼と呼ばれる化け物を狩る組織です。もっとも他にも悪鬼を狩る組織はありますが、ここまで大きいのはうちくらいですね。貴方を呼んだのは他でもない。僕たちに協力して欲しいのです」  上野くんの言葉を聞きながら女性はしばらく呆然としていたが、ハッと我に返ったように「いやいやいや! 勝手に呼んどいて協力しろってなんだよ! ふざけてンのか!」と叫び目を剥いて、目の前にある上野くんの胸ぐらを掴もうと腕を伸ばした。 「いやその……すみません、僕も嫌々やらされてるんですよ……あそこの笑顔の気持ち悪い人に」  先ほど自ら二番手を予約した人間とは思えない発言に、指を差された浅間さんは「そうそうこの笑顔の気持ち悪い人が諸悪の根源諸悪の根源」と半ば開き直った感じで一歩前に出た。彼女は初めて浅間さんとその近くにいる秋山さんを認識したようで、怪訝そうに彼らを見据えた。 「なんにせよ悪鬼を狩って領土を取り戻せればお前の世界に返してやるよ」  相変わらず気持ち悪い笑顔を浮かべたままヘラヘラしている浅間さんの右頬を彼女の左の拳が捉えた。鈍い音が響き、彼は壁際にあった機材を巻き込んで倒れこむ。 「ちょっ、浅間さぶべらばっ!」  それは一瞬で何が起こったか私の視点で説明するのは非常に難しいが、浅間さんを助け起こそうと駆け寄ったはずの秋山さんが逆に浅間さんに左手で殴られて派手な音をたてながら反対方向の壁に突っ込んだ。上野くんは「ああああ調整済みのレーダーが!」と叫ぶ。心配するところはそこなのか。 「なんで今秋山さん殴ったの!? ねえなんで!?」  いろいろ動転して思考が追いついていない空音さんに怒鳴られ、浅間さんは右頬をさすりながら「あ? なんかいたか?」ととぼけていたが、多分相当痛くて、しかし目の前の彼女を殴り返したら殴り合いに発展するなどのいろいろ面倒なことになるので秋山さんを殴ったのだろうと考察する。 「おいテメェ、いきなり殴るたぁどういう了見だ?」  浅間さんはそう言うが、それは秋山さんの台詞にもなり得る。明らかに助けようとしてたのに。それに秋山さんはピクリとも動かないし、上野くんはといえばその近くにある機械を見て何やら声にならない悲鳴をあげている。  横でカルティエさんと吉川が声を合わせて 「カオスな空間だな……」 「カオスな空間ね……」 と言っていたのが印象的だった。
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