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その瞳は何も映していなかった。それがたまらなく不快だった。その表情をしたいのはこっちだ。たかが人が死んだくらいで。理解しがたい。数秒考えて、理解したくないんだと思い直した。
「……帰ろう、団長」
彼女は俺の言葉にも反応しない。面倒だ、放置して帰還してしまおうか。その姿があの娘に重なる。彼を失った時のあの娘の目に似ている。似てないよ、と自分の目を否定した。あの娘はこんなに弱くないのだから。
あの娘はもっと強かった。いつも無能と言われていたけれど。ああ、言っていたのは俺と彼だっけか。それは冗談だったと、今更言えるわけもない。
「相模隊長は、なんで笑ってるの?」
笑うしかないからだ。自分が招いたこの結末に。一人で処理できないこの結末に。じゃあ君は何を泣いているんだ? そう問いかけようとしたが、俺の口から出たのは「なんでかな」という小さな呟きだった。
「帰ろう、また隊を編成し直さなくちゃ。……君のせいだよ? 君のせいでこんなに人が死んだんだ」
彼女は俺の声を聞いてまた顔を歪めて泣き始める。
【雪のせいだ】
違う。
【雪のせいだ! 雪のせいで――!!】
違う、俺のせいじゃない。そして今もそうだ、彼女のせいじゃない。じゃあ、
じゃあ、この結末は誰のせいなんだろうか。
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